大好きな人。
今日は新入生歓迎会。
体育館に入場すると沢山の先輩が拍手で迎えてくれた。

自分の席に着くと先生の話が始まった。
そして、各部活の説明。

部活の説明は先輩が実際に使う道具を使って説明してくれた。


「続いては陸上部の説明です」


そのアナウンスが流れた直後、恋に落ちた。

陸上部の先輩たちが舞台の上に上がっている。

その中で1人だけ輝いていた。
彼が舞台の上に上がる時は映画の中のようにスローモーションに見えた。

綺麗な髪の毛。
綺麗な瞳。
綺麗な輪郭。

『かっこいい、すきだ。一目惚れした。』

そう思った。
すると周りの人は後ろで走ったりバトンパスをしたりして好きになった先輩は前に出てマイクを持った。


「新入生の皆さんこんにちは!
僕は陸上部の部長の泉陽斗(いずみはると)です!!
陸上部では後ろでやっているようなバトンパスや早く走る練習をします!
また、長距離や短距離、高跳びなど沢山の種目の中から好きなものを選ぶことができます!
僕たちとアオハルしましょう!!!」


泉陽斗という名前。お兄ちゃんと同じだ。
名前が被ることなんてあるんだ。しかも同じ学年で。

最初はすごく驚いたけど顔が全く違う。
あんなにかっこいいならお兄ちゃんでは無い。


優しい声で優しい笑顔で先輩の説明が終わった。


かっこよすぎて集中して聞けなかった。
その後の部活の説明の時も陽斗先輩のことを考えてしまって集中出来なかった。


新入生歓迎会は終わり、先輩たちが教室に帰っていく。


「はい、えっと、1年生は体育館に残ってください」


先生の声が響く。



先輩たちが全員体育館から出たあと先生が怒鳴り始めた。



「なんださっきの態度は!!それと、制服の着こなし!!全くできてない!」



怖くて怖くて気がついたら涙が溢れていた。


先生の話が終わり、教室に帰る時も涙は止まらなかった。


「えー、教室に帰る前に学校を回りましょう」


先生の提案で学校内を回ることになり、先輩の教室の前を通った。


すると次々と「こんにちは」という声が聞こえてきた。


そのまま前に進むと先輩たちが廊下にたって迎えてくれた。


先輩達に泣いているのがバレないように下を向いて進んでいると1人の先輩に手を引っ張られた。


顔を上げると陽斗先輩だった。


すると陽斗先輩は私の手を引き、歩きながら小声で
「大丈夫??どうしたの??」
と心配してくれた。


その優しい声にもっと涙が溢れてしまう。
しばらく陽斗先輩と一緒に歩いていると屋上に着いた。


「ここなら誰も来ないから大丈夫だよ」
陽斗先輩と一緒に腰を下ろす。


私は少し呼吸を整えてから
「先輩、授業遅れちゃいませんか?」
とたずねた。


「そんなこといいから、まずは泣きやも?」
陽斗先輩はそう言って私の背中をさすってくれた。

もっと好きになってもっと涙が溢れた。


「大丈夫だからね、深呼吸しよ」
そんな陽斗先輩の言葉でだんだん呼吸が整ってきた。


「ほんとごめんなさい。迷惑かけてすみません。」

私が謝っても陽斗先輩は「そんなことないよ」と笑顔を浮かべた。


「で、なんで泣いてたの??言いたくないなら言わなくても大丈夫だけど、」
陽斗先輩は優しく私の顔を覗き込んだ。


「田中先生が怒鳴って、、、」


私がそう言うと陽斗先輩は優しい笑顔で
「そーだったんだ、俺も初めて怒鳴られた時はほんと怖かったよ。」

と言いながら私の頭を撫でてくれた。


心臓が爆発しそうになった。
もっともっと好きになる。

しばらく陽斗先輩と話した後、
「よし、教室戻るか、!」
陽斗先輩が立ち上がったので慌てて私も立ち上がる。


「ありがとうございました。ほんと助かりました。」
そう言って教室に戻ろうとした時、
「え、一緒に教室まで行くよ」
と陽斗先輩が私の手を掴んだ。


自分の心臓の音が陽斗先輩に聞こえるくらい心臓が早く動き音を立てる。


陽斗先輩と一緒に歩いてる途中、不安が頭をよぎった。


先生になんといえばいいのだろう。
きっと怒られる。
みんなの前で新学期そうそう怒られるのは恥ずかしい。


そんなことを考えながら陽斗先輩と歩いていると私の教室の前まで着いてしまった。


「先生、あの、体調不良になっちゃったみたいで、、、」


陽斗先輩が先生にそういった。
嬉しくて死にそうだった。


「おー、ありがとな、大丈夫か?」

先生の声に慌てて返事をする。

「今はもう大丈夫です。遅れてすみません。」


すると先生は陽斗先輩にお礼を言い、私を教室の中に入れた。


授業中も陽斗先輩のことしか考えられなかった。





新入生歓迎会から数日たった。


「ゆいー!部活と委員会どーするか決めたの??」


家でご飯を食べていると隣から聞こえた声。
お兄ちゃんだ。


私は即答する。
「部活は絶対陸上!」



するとお兄ちゃんがにやにやした。
「なんで?絶対なんかあるだろ」


「別になんもないよ。ただ陸上もいいかなーって」


「絶対嘘だ。」


「嘘じゃない、よ」


「ほんと??でも陸上部は危ないから却下」


「は?なんで??私がやりたいんだけど」


「俺が陸上部でよく怪我してるから。俺の愛する妹をけがさせるわけにいかないから。」


「怪我しないから、もし怪我したら辞めるよ」


「あー。それならいいよ」


お兄ちゃんが納得したように頷いた。
まぁ、怪我したら辞めるなんて嘘に決まってるけど。


「で?委員会は?」


「まだ決めてない。明日の委員会オリエンテーションで決めるつもり」


「へー。お兄ちゃんのところ来れば??」


「やだよ。」


「男だらけのとこには入んなよ」


私は頷いたが、陽斗先輩がいるところに
入るつもりだ。



委員会オリエンテーション。
まだ陽斗先輩は出てこない。


「こんにちは!図書委員です!
本が好きな人やこれから本を読みたいと思ってる人、本に興味がない人、どんな人でも大歓迎です!!」


元気な陽斗先輩の声。
大好きな声。


最近小説にハマってるので丁度良かった。
図書委員会にはいろう。



家に帰って少しするとお兄ちゃんが帰ってきた。


「ただいまー、俺のオリエンテーションどうだった??」


「え、何委員??見てなかった。」


「は?図書委員だよ、最後ににやった」


「えー、ほんとに?いなかったよ」


「で、?何委員にする??」


「図書委員!!図書委員以外ないよ」


「は、ちょっと待て。」


しばらく待っているとお兄ちゃんが口を開いた。


「うーん、分かった!お兄ちゃんのこと大好きなんだろ?」


「え、、、。違うし別の理由があるから」


「絶対そうだ。それ以外ないだろ。」


「別に偶然だよ」


「だとしても絶対男に近づくな。
男は急に裏切ったりするから。辛い思いさせたくない。」


でも陽斗先輩はそんなことするはずない。



「今日は委員会があるので、それぞれの場所に行ってください。」


そんな先生の言葉に嬉しくなる。
陽斗先輩に会えるんだ。
あわよくば話せるかもしれない。


図書室の前に着いた。
入ろうか迷っていると先輩達が後ろから走ってくる。


「おまたせー!1年生だよね?可愛いー!」


女の先輩にそう言われなんと返せばいいのか分からなくなった。


「おい、陽斗ー!1年生待たせてるよ」


そういったのは違う女の先輩だ。


すると後ろから鍵を持った陽斗先輩が後ろから走ってくる。


「ごめんごめん!はいどーぞ」


陽斗先輩が図書室の鍵を開けてくれた。


「ありがと!」
女の先輩が中に入っていく。


ほかの1年生も中に入り陽斗先輩と2人になった。


先輩が先に入るべきか私が先に入るか考えていると


「ねえ、この間の子だよね?よろしく!」
と陽斗先輩が微笑んだ。
そして私を図書室の中に入れてくれた。


嬉しすぎて顔が赤くなって死ぬかと思った。


「じゃあ委員長やりたい人いますか??」
そんな先生の声に2人が手を挙げた。


3年生の近藤美香先輩、大好きな泉陽斗先輩だ。


「じゃあ2人が前に出てきて意気込みを!
お願いします。まずは近藤さんから」


「はい。私が委員長になったらこれまでに無いくらい素晴らしい図書室の環境を目指し、より多くの人の図書室利用を可能にします」


思っていた以上にすごい。
近藤先輩は沢山本を読んでいるからこんなに素晴らしい文章がスラスラと出てくるのだろう。

次は陽斗先輩だ。


「えっと、僕は近藤さんみたいなことは言えないけど本が好きだから沢山の人に本を読んで貰いたいと思っています!
僕が委員長になったらどーなると思いますか??・・・
はい。楽しくなるんですよね!こんな僕ですけどよろしくお願いします。」


2人が席に戻ると拍手がおきた。


「じゃあみんな伏せてどちらかに手を挙げてください」


先生の指示に従い、みんな顔を伏せる。


もちろん私は陽斗先輩に手を挙げる。
陽斗先輩のことを好きじゃなくても陽斗先輩を選んでいたと思う。


「はい、近藤さんがいいと思った人!
じゃあ、泉さんがいいと思った人!」


先生の合図で顔を上げるとホワイトボードにそれぞれの票の数が書いてあった。


「委員長は泉陽斗さん、お願いします」


僅差で陽斗先輩だった。
嬉しかった。
今日の委員会はこれで終わった。


「ねえ、名前なんて言うの??」


廊下を歩いていると後ろから声がした。
大好きな声だ。


振り返るとやっぱり陽斗先輩で急に心臓がドクドクと音を立てる。


「えっと、泉 結 (いずみ ゆい)です」


「結ちゃんって言うんだー!可愛い名前!」


嬉しすぎて顔が真っ赤になる。


「俺と同じ苗字!泉ってもしかして陽斗の妹??」


「はい!お兄ちゃんがいつもお世話になってます」


「やっぱり顔よく見ると似てるねー!」


陽斗先輩に顔を見られて死にそうだった。
キラキラした目で私を見てる。


「あ、こんなに顔みたら恥ずかしいよな、ごめん」


陽斗先輩が謝った。


「あ、帰らないとお兄ちゃんに怒られちゃう。ごめんなさい。失礼します。」


すると陽斗先輩は笑顔で手を振ってくれた。
帰る途中、少し寄り道をしたから遅くなってしまった。
< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop