大好きな人。
「おーい、結ー、朝だぞー」
「え??」
起きるとベットの上にいた。
お兄ちゃんの膝の上にいたのになんで。
「おはよ、やっと起きたか」
「なんで??私、昨日リビングで」
「お前が寝たから運んでやったんだよ」
「え。」
「別に変なことしたりしてないから」
「良かった。」
正直、されても良かった。
「お兄ちゃん、今日部活ある??」
「あるよ、確か今日から1年が来るって」
「よろしくね、陸上部行くから」
「まじで怪我すんなよ」
「はーい」
授業中、部活が楽しみで仕方なかった。
お兄ちゃんが頑張ってるところを見れる。
「はい、今日の授業は終わりです。みんなそれぞれ部活動今日から頑張ってください」
先生がそう言ったので、私は急いで着替えて陸上部の練習場所、校庭に向かった。
「1年生??こっちこっち、おいでー」
女の先輩が笑顔で手招きしてくれたので他の1年生と一緒に先輩のところに向かう。
「1年生みんな来たかな??よし、じゃあ今日からよろしくね」
そう言われて周りの1年生と一緒に「よろしくお願いします」
と頭を下げる。
するとお兄ちゃんが私たちのところに来た。
「部長の泉陽斗です!
とりあえず今日はストレッチして50mのタイムはかろう」
かっこよすぎて死にそうだ。
みんなで先輩たちと同じように並び、ストレッチを始める。
私も先輩の真似をしてストレッチをする。
「次はこうして〜」
先輩たちが優しく教えてくれた。
横を見るとお兄ちゃんが他の1年生ひとりひとりのところに行って優しく体を押していた。
お兄ちゃんが他の1年生に対して「大丈夫?」とか「体硬いね」とか「ちょっと押すよ」
だとか言っているのが聞こえる。
嫉妬してしまう。
早く私のところにも来て欲しい。
そう願っているとお兄ちゃんが私のところに来た。
「体押すから息吐いて〜、ってお前か。
ちょっと痛いけどとりあえず息吐いて」
その優しい声に心臓が溶ける。
「いたい〜、」
私が小声でお兄ちゃんにそういうとお兄ちゃんも小声で返してくれた。
「痛いもんだから、もうちょい我慢して」
その声にまたドキドキしているとまた大好きなお兄ちゃんの声が聞こえてきた。
「よし、よく頑張ったな」
そう言ってお兄ちゃんはなでなでしてくれた。
もう心臓がバクバク動くんじゃなくて
心臓が止まりそうになった。
その後もストレッチをして、準備運動をし、
50m走の準備をした。
「じゃあ俺がタイム測ります!みんな頑張ってください!」
お兄ちゃんがタイムを測るらしい。
足が遅くなっていたらすごく恥ずかしい。
とうとう自分の番だ。
「結ー、頑張れよ、でも怪我だけはすんな」
「うん、」
「よーいドン!!」
お兄ちゃんの合図で走り出す。
お兄ちゃんはトラックの中を通ってゴールまで走っていた。
ラストの直線。
ゴールにはお兄ちゃんがいる。
大好きなお兄ちゃん。
お兄ちゃんのところまで早く行きたくて気がついたらゴールしていた。
「おつかれ、お前、ラストの直線めっちゃ早くなったな」
ラストの直線、早くなっていたのを自覚する。
お兄ちゃんのおかげだ。
お兄ちゃんはスタートのところに戻ってほかの1年生のタイムをとっていた。
呼吸を整えながらお兄ちゃんを見ているとやっぱりかっこいい。
今までなんで気づかなかったんだろう。
1年生全員のタイムを測り終わったけれど、時間が余っている。
「じゃあ時間余ってるしスタートの練習でもするか」
先輩たちについて行くとクラウチングスタートの練習をするようだ。
先輩たちは自分たちで練習していて1年生はお兄ちゃんが教えてくれるようだ。
お兄ちゃんが手の位置や足の位置をほかの1年生に教えている。
やっぱり嫉妬してしまう。
「OK!」
お兄ちゃんが他の1年生を褒めている。
次は私の番。
お兄ちゃんの隣に立つと嬉しくてたまらない。
「おー!結、じゃあここに手置いて足はここら辺」
お兄ちゃんの手が私の足に触れた。
嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
でも少し恥ずかしかった。
「お前、めっちゃ顔赤いよ、大丈夫??」
「えっ、大丈夫だよ」
「あっ。俺が足触ったからだよな、ごめん
男に足触られるとか兄妹でも恥ずいよな」
「全然大丈夫。」
「膝少しだけあげて、よーいドン!」
かっこいい。大好き。
そう思いながら走った。
「今日は1年生初めてだったしこれで陸上部の練習終わります!」
お兄ちゃんがそういうとみんな
「ありがとうございました」
と答えた。
「結ー、一緒に帰んぞ」
「うん!」
今日もお兄ちゃんと一緒に帰れる。
凄く嬉しい。
「てかお前、なんで最後の直線急に早くなったの??」
なんのことか分からなくて一瞬止まってしまう。
「ほら、50mの時の」
「あー、わかんない!」
「わかんねーのかよ、」
「うん、私、何秒だった??」
「7秒6だったよ、意外と早いじゃん」
「まじ!?うれしー」
「まぁ、俺よりかおそいけどな」
「しょーがないじゃん」
「はいはい、」
この何気ないやり取り。
お兄ちゃんは別に何も思っていないんだろう。
でも私はこんな会話だけでも凄く嬉しい。
そう考えながらお兄ちゃんと歩いていると急に足が痛くなって立ち止まってしまった。
するとそれに気づいたお兄ちゃんが走ってくる。
「どーした??大丈夫か?」
「なんか足が痛くて」
「足のどの辺??」
「左のくるぶしの上くらいのとこ」
「ちょっと触ってもいい??」
そう言われて答えようとしたけどお兄ちゃんがかっこよすぎて答える暇もなかった。
お兄ちゃんはしゃがんで私の足を診てくれた。
「多分急に沢山走ったからだと思う、俺も久しぶりに走るとここの筋痛める時あるから」
「そっか、ありがと」
お兄ちゃんもよく痛めてるなら少しくらい我慢しようと思った。
その時、
「おいしょっ、」
「えっ。」
お兄ちゃんが私を持ち上げた。
お姫様抱っこだ。
嬉しくて恥ずかしくてもっとお兄ちゃんを好きになって。
頭の中は混乱していた。
「顔赤いよ、恥ずかしい?」
その声にもっと顔が赤くなる気がした。
「そりゃお兄ちゃんにお姫様抱っこされるとか恥ずいに決まってんじゃん」
するとお兄ちゃんは笑って
「ごめんな、でも足痛めてんなら仕方ないだろ」
と答えた。
「うん、ありがと」
何とかそう答えることができた。
「よし、到着!」
「ありがとう」
私はそう言って降りようとしたがお兄ちゃんがおろしてくれなかった。
「えっ、降りるよ」
「まだダメだよ、家ん中まで」
お兄ちゃんはそう言って私を家の中まで運んでくれた。
「よし、おろすよー、」
「ありがと」
私を椅子に座らせるとお兄ちゃんはしゃがんだ。
「ちょっとごめんな、見させて、怪我してたらあれだから」
お兄ちゃんの手が私の足に触れた。
心臓がドキドキして死にそうだった。
「ちょっと押すよ、痛かったら教えて」
「いたいっ、」
「あ、ごめんな、ここ痛いか。多分筋痛めてるな」
それからお兄ちゃんは少し考えてから
口を開いた。
「一瞬痛いかもしれないんだけど、ちょっとだけ我慢できる?」
「うん」
私がそう答えるとお兄ちゃんは
「ごめんな、一瞬だけ痛いよ」
と言って、私のくるぶしの上あたりをマッサージした。
「いたっ、」
一瞬痛くて声が出てしまった。
するとお兄ちゃんは
「ごめんな」と優しい声で答えてくれた。
だんだん治ってきた。
「よく頑張ったな、痛かったよな、ごめん」
お兄ちゃんは私の頭を撫でてくれた。
嬉しすぎて死にそうだった。
「ありがと、治った!」
「よかったー、どっか痛くなったりしたら俺に言えよ」
「うん」
お兄ちゃんの優しさに体が溶けてしまいそうだった。
お兄ちゃんと夜ご飯を食べながらお兄ちゃんの好きな人について急に気になった。
聞いたら私が傷つくだけだとわかっていても気になってしまう。
「そーいえばさ、お兄ちゃんの好きな人ってどんな人なの?」
「え?俺の好きな人、か。」
「あ、恋愛感情の方でね」
「あぁ、すんげー可愛くてとにかく優しい人だよ」
「へー、!そっか、頑張ってね」
「おう、ありがと」
笑顔で返したが本当はすごく辛かった。
お兄ちゃんはきっと本気でその人のことを好きなんだ。
私の恋は叶わないんだ。