男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 エリオとルディオが気軽に言葉を交わす様子を見て、いいな、と思った。なぜかもっと話していたくて、面談がそろそろ終わりそうな気配にそそわした。

 セバスチャンが替えの紅茶とクッキーを持ってきた時は、「よくやった!」と心の中で褒めたものだ。

 【赤い魔法使い】は、ジークハルトにとって、不思議と安心できて見ていても飽きない魔法使いだった。

 初めから期待もされていなかったどころか、治療係の就任初日で悲鳴を上げまくったのも、印象が悪かっただろう。

(――だから、だろうか)

 なんだか、これ以上は失望されたくないような気がした。

 一緒に頑張ろうと言ってくれたエリオに、これまでいた治療係のように『私には無理です』と諦められたら、立ち直れそうにない予感がした。

 理由は分からないけれど、彼に見限られたくないと思うのだ。

(まぁ、以前からルディオに色々と聞かされていたというから、期待値はゼロどころか、へたをするとマイナスだろうとは思うが……)
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