男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「ふふ、ご褒美制での治療なんて、面白いことをするよねぇ。まさかジークが、彼の同行があればキャンディー一つで、王宮も出歩いてくれるようになるとは思ってもいなかったよ。そんなに美味しいの?」

 興味本位といった調子で尋ねられ、ジークハルトは困ってしまった。

 味にも差異はない。しかし、エリオから『ご褒美です』と笑顔でもらったキャンディーは、不思議と特別に思えてくるのだ。

『美味しいですよ、特別なキャンディーなんで!』

 初めてもらった際、見本のようにキャンディーを食べる姿を見せられたせい……なのかもしれない。

 よく分からないが、エリオが食べると、ものすごく美味しそうに見える気がする。

 甘いものを食べていると、とくに可愛らしさ目立った。唇についた甘味を舐め取る際、ちらりと覗く舌も目を引いた。

 その様子を思い返すたび、胸の辺りが少し落ち着かなくもなる。

 なんというか、やけに艶っぽさを感じる気がするのだ。
< 151 / 392 >

この作品をシェア

pagetop