男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「嫌ってはねぇよ、本気で怖がってるだけなんだ。本人を前にしたらよく分かるけど、怖いって自宅の部屋から一歩も出ないから心配されてんだ」

 前言撤回。ただの情緒不安定なヘタレ野郎で決定だ。

(性格に難あり。うん。私が一番関わりたくないタイプだ)

 するとルディオが、紅茶を飲みつつ残念そうな目になる。

「また、内心女の子っぽくない辛辣なことを言っている気がする……」
「なんでそう心を読むのかな。魔法使いか」
「いやぁ、これだけ一緒にいると思考パターンが顔で見て取れる。エリオって意外と素直なんだよなぁ。偽名に反応しにくいのも見ていて分かる。たぶん、響きち近いと思うんだけどなぁ」

(彼こそ、意外とよく見てるんだよなぁ)

 結構侮れない相手だと思う。マイペースで緊張感がなさそうなのに、しっかり見ていたりする。

 エリザ、なんて今更呼ばれ慣れないので教えていない。

 黙って紅茶を飲んでいると、ルディオも話を変えてくれた。
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