男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 フィサリウスは、考えるようにしばらくテーブルの上を見ていた。

 聞き終わった話を頭の中で整理し終えたのか、間もなく「なるほどね」と言って、そこにあるティーカップを持ち上げた。

「聖女に勇者か……そうだとすると、君か魔物を消滅させられる理由にも結び付くね」
「よく消滅だと分かりましたね」

 部屋の主が紅茶を飲んでくれたので、エリザもようやくテーブルに置かれた菓子をつまんだ。緊張をほぐすように丹念に咀嚼する。

「聖女というと浄化のイメージが少なからずあるよ。魔力とは別の力なんだろう。我が国の古い時代に、その言葉が出てくる」
「へぇ。この国にもその文化はあったんですね」
「おとぎ話のレベルだけどね」

 彼が肩をすくめて見せる。まさか事実として聞くとは思わなかったと、仕草と表情で語ってていた。

「大昔、精霊の力を借りて魔法が使えたそうだ。君の国にもあったかな?」
「ないですね。精霊はあくまで魔術の構成の記号要素にすぎないんです。元素を精霊にみたてて魔術陣に描き、必要道具を揃えます」
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