男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 だんだん大きな子供に見えてくるので、この懐きっぷりは勘弁して欲しい。

 それから――困っているのは、この三日でおちゃめっぷりも加わったことだ。

「エリオ」
「なんですか――うぇ!?」

 飴玉を渡したはずの手を掴まれて、彼の方にぐんっと引っ張られた。

 次の瞬間、彼の鍛えられた胸部にエリザは顔面からダイブしていた。そのままむぎゅっと抱き締めるられる。

 会議も終えたジークハルトからは、清潔な石鹸の香りがした。その前に入っていた訓練とやらで一汗流したのだろう。

 香りを意識すると妙にどっと心臓がはねそうになる。

「……何をしているんですか、ジークハルト様」

 どうにかはぐらかして、ふてくされた声を出した。

「頑張ったので、飴玉プラス抱擁で」
「はぁ、なるほど……?」

 身長差が大きいのでこっちとしては苦しいんだけど、とエリザは思った。

 それから、触る位置によっては性別がバレそうで、心臓に悪い。

(……でも今顔を上げられないっ)
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