男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 本気でそう悩んだ。そもそも女性恐怖症というのが幻だったのでは、と困惑が極まった、ジークハルトを私室に送り届ける最中、

「うわあぁあぁ!」

 廊下を通り過ぎるメイドを前に、ジークハルトに肩を掴まれて盾にされた。

(――うん、いつも通りだわ)

 というか自分より小さな〝男〟を盾にするなよ、とかエリザは乾いた笑みを浮かべて思ったりした。

 とりあえずジークハルトを私室へ送り届けた。使用人への指示のためか、一階へと降りる際に階段でセバスチャンに遭遇した。

「どちらへ?」
「厨房です。軽食をとりに」
「なるほど。あなた様も苦労しますね」
「なんかそれ、さっきからすっと言われている気がするんですけど……」

 ジークハルトの寝室を出てから、しょっちゅうみんなに労われている気がする。

「まぁ実行者も分かったことですし、この苦労も後少しだと思えば心配は半分くらいになりました」

 今のところジークハルトも『呪い』を解くまで待つと言った。
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