男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 まるで町の牧師みたいだと思った。つい反応が遅れてしま、エリザは慌てて立ち上がり自己紹介をした。

「すみませんっ。その、招待された【赤い魔法使い】のエリオと申します」
「お嬢さんを魔法使いと呼ぶには申し訳ないな……本名はお聞きしていないんだが、活動名の『エリオさん』でお呼びしてもよろしいかな?」

 え、突然の名前呼びですか?

 下げていた頭をぱっと起こすと、ラドフォード公爵が困ったように微笑んだ。

(あ。……紳士として女性の扱いが徹底されているせい?)

 そのへんの事情は詳しくない。

「えっと……どうぞ好きなようにお呼びください」

 エリザはそうとだけ答えた。初めから性別が知られている件について、先程からルディオの存在が脳裏にちらついている。

 気になりつつ、まずは彼の着席に合わせて腰かける。

 メイド達がラドフォード公爵の前にも紅茶を置き、退出するとセバスチャンが内側から扉を閉めた。

「実は、外国の術者だとルディオから聞いてね」
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