男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 そういうのって、心の問題によるところが大きい気がする。

 本人が女性をかなり避けたがっているのは、ルディオから聞いて知っていた。慣れようにもなれるはずがない。

 エリザは、真面目な表情を保ちつつ考えてしまう。

(嫁いだという三人の姉のせいもある、という推測も半ばは当たっているのか)

 症状が出た時期からすると、母を亡くしたショックが原因ではないようだ。

「私はね、息子が女性嫌いなら仕方がないとも思い始めたんだ。心から愛する相手であれば男でも構わないと思って告げたのだが、逆に泣かれてしまって……最近は、ひどい落ち込みようなんだ」

 エリザは、鼻を啜るラドフォード公爵に驚いた。

(え。何? この人、親馬鹿なの? もしかして甘やかしに甘やかしたから、その息子は知恵熱で倒れるくらいヘタレに?)

 失礼なことが諸々脳裏を過ぎっていった。

 というか、跡取りなのに諦めて同性を勧めたことにも驚きだった。
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