男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「うわぁあぁまずいっ! ジークハルト様の訓練指導が終わっちゃう!」
エリザが扉を開け放つと、騎士がびっくりしたように目を丸くした。
「うわっ、ごめんなさいっ。それじゃあ私行きますからっ」
「走ると危ないから、気をつけて!」
飛び出したエリザは、聞こえてきたフィサリウスの声に「はいーっ!」と言いながら大急ぎで走っていた。
訓練され、鍛えられた自分が転ぶなんてことはないと思っての返事だった。
それを廊下から見送ったフィサリウスに、護衛についていた騎士が言う。
「……大丈夫ですかね?」
「まぁ、誰かに介抱された、なんていう噂が流れて、ジークの耳に入らなければ相手は生き続ける」
「【赤い魔法使い】様ではなくて、相手の誰かが……」
騎士たちがゾッとする。
ところで、と訪れていた騎士が続けた。
「婚約申請書の件で、王家の承認を求める書面が来ています」
フィサリウスは、そう言われて差し出された封筒にしばし沈黙した。
「…………早いな」
思わず落とされた彼の呟きに、事情を知る専属の護衛騎士たちもまた、先程走っていった相手を心配するように黙り込んでしまったのだった。
エリザが扉を開け放つと、騎士がびっくりしたように目を丸くした。
「うわっ、ごめんなさいっ。それじゃあ私行きますからっ」
「走ると危ないから、気をつけて!」
飛び出したエリザは、聞こえてきたフィサリウスの声に「はいーっ!」と言いながら大急ぎで走っていた。
訓練され、鍛えられた自分が転ぶなんてことはないと思っての返事だった。
それを廊下から見送ったフィサリウスに、護衛についていた騎士が言う。
「……大丈夫ですかね?」
「まぁ、誰かに介抱された、なんていう噂が流れて、ジークの耳に入らなければ相手は生き続ける」
「【赤い魔法使い】様ではなくて、相手の誰かが……」
騎士たちがゾッとする。
ところで、と訪れていた騎士が続けた。
「婚約申請書の件で、王家の承認を求める書面が来ています」
フィサリウスは、そう言われて差し出された封筒にしばし沈黙した。
「…………早いな」
思わず落とされた彼の呟きに、事情を知る専属の護衛騎士たちもまた、先程走っていった相手を心配するように黙り込んでしまったのだった。