男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
              ◆

 ようやくジークハルトの術が解けると知れて、エリザは上機嫌だった。

 訓練場へと向かいながら、この吉報を早くジークハルトに伝えたいと思った。それからルディオだ。

 ジークハルトに『呪い』の件を打ち明けてしまったことは、フィサリウスはとくに問題視しなかった。

 解除の件について、二人に堂々と進展を話せるようになったのもエリザは嬉しい。

(師匠のもとを出てから――ルディオも、ジークハルト様も、初めてできてすごく仲のいい友達だから)

 もしかしたら、ジークハルトの方は、術が解けた時には少しよそよそしい距離感を置かれるかもしれない。

 そこには、正直言うと少し寂しい気持ちは湧く。

 ジークハルトが信頼してくれている態度を、可愛いなと感じていたのは本音だ。

 そして日頃のジークハルトの頑張りや成長を見ていたからこそ、すっかり情が湧いてしまっていた。

 あんなに一緒に居たがられたのも、エリザには初めての経験だったから。

 でも彼の独り立ちを望んでいるのも本当だ。
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