男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 呪いがなくなったら、ジークハルトは家を継ぐ人間として誰かと婚約できる。

 蕁麻疹や失神や恐怖心が出るかもと細かく女性に怯える必要はないし、今を、自由に生きられる。

 ルディオも、ジークハルトと結婚させられる心配がなくなって安心するだろう。

 ジークハルトを治療するのが、エリザの目標なのだ。

 女性とも会話ができるようになってきたし――あとは、原因の根本になっている『呪い』を解けば自分の役目は終わりだと、エリザは思っている。

(呪いを解いたら、私じゃなくても彼を導ける――)

 訓練場に向かってみると、先に廊下へルディオが上がってきた。

「おっ、走ってどうした?」

 すでに濡れたタオルで身体も拭いたあとらしい。

 エリザはぱぁっと表情を明るくした。彼の城から続いた数人の騎士たちが、可愛いといってざわついたが視界に入らなかった。

「ちょっとこっち来て! 聞いて欲しいことがあるからっ」

 訓練場と反対側の廊下の端により、支柱を背に呪いの解除方法を発見したことについて教えた。
< 297 / 392 >

この作品をシェア

pagetop