男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 そういうわけで、異国の地で森を中心に転々としながらめきめき鍛えられた。

 髪が邪魔にならないよう師匠とお揃いにして、似たような格好していたから、男の子にしか見られなかった。

「自衛のためにはいいさ。お前も、旅で実感したろ」
「まぁ、なめられたくはないですね」

 そして十六歳の時、別れは訪れた。

 それはゼットが聖女と勇者、そしてエリザの存在を知る人々に託された期間だった。

「お前は、俺の一番の弟子だよ。なんなら、俺がずっとここにいても――」
「だめですよ。師匠は帰らないと。きっと、みんな待ってる」

 何度も魔術で手紙が来ていた。彼は、最強の魔術師である彼にしか飛べないくらい遠い向こう国で、たくさんの人達に必要とされている。

 エリザは、行けない。

 存在が魔術で感知されたら最後、彼の十六年が無駄になってしまう。

「私、師匠の元を卒業したので一人で気ままに、強く生きます!」
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