男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 与えられた役目を果たすべく、彼が紅茶で一息つくのを待ってから尋ねる。

「ジークハルト様、質問してもよろしいでしょうか?」
「はい、構いませんよ」

 彼が落ち着いた口調で答えてきた。疲労した微笑を返した彼を、ルディオが興味深そうに横目に見た。

(なんだろ? 気になるな)

 とはいえ、こちらはまず彼の状況把握を進めよう。

「まず症状についてですが、見えている女性が近づくと、どうなりますか?」
「耐え難く逃げ出したい心境になります。昔から助けてもらっているメイド達であれば、その、近付かなければ見るだけは平気なのですが……」
「じゃあ、相手が見えない場合は?」
「僕は軍人として気配を感じ取れますので、近くにいられると症状が出ます。たとえ僕自身が目隠しをされていても同じです」

 目隠しって、試したことがあるのだろうか?

 というか、とエリザは思う。

(女である私を前に逃げ出さないということは、彼は私に魅力がないばかりか、女性としての気配さえ欠けていると言いたいのかな?)
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