男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 それを表に出してしまわないように、ひとまずにこっと笑顔を作った。

 事情を知らないジークハルトが首を傾けるそばで、ルディオが『目が笑ってねぇよっ』と視線で伝えてくる。

 エリザは笑顔を向けて、目線で『黙れ』と返した。

(――考えられる症状の原因は、二つ、か)

 ルディオが静かになってすぐ、エリザは考える。

 視覚的に女性であると認識した途端に、恐怖心を煽られること。そして気配だけで身体が震えることから、肉体的にも異性という存在も受け入れられなくなっていること――。

「症状は気絶と、それから蕁麻疹でしたか」
「触れられた部分から、場合によっては全身まで広がります」
「ああ、ショックの度合いで、ということでしょうね」

 とすると、やはり彼の恐怖心が鍵になっているのだろう。

 ふむふむと考えるエリザを、ジークハルトがまたしても意外そうに見つめる。ルディオも「専門家っぽい」と呟いていた。

(私は専門家でも魔法使いでもなくて、魔術師の弟子だよ)
< 49 / 392 >

この作品をシェア

pagetop