男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 エリザが小さな口でもそもそと食べている間に、ジークハルトは、最近は周りから特に結婚しろと言われることが多いのだという悩みをこぼし始めた。

 話を聞くに、結婚はしなければならないとは分かっていて、彼自身も結婚願望がないわけではなさそうだ。

 こちらの公爵家の方針が、義務的な政略結婚でないらしい。

 ジークハルトは暖かな家庭を持ちたい、という希望はあるようだった。

(なんか――思っていたよりも普通、かも?)

 そんな悩み話は、年頃の男女と変わらないように思えた。

 結婚なんて絶対にしたくない、と嘆くほど女性を心から毛嫌いしている感じはない。メイドがいるからという理由だけで、部屋に引きこもるみっともなさを省けば、ただ恋愛に臆病なヘタレだ。

「――エリオ、顔に気持ちが出てる」
「――だから、読むなっての」

 クッキーを食べながら言い返したものの、物珍しげな感じで眺めているルディオが気になった。

 まぁ、何はともあれ面談が無事に済んでよかった。
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