男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「ジークハルト様、抱え込むのは良くないですし、ここには私もルディオもいますからお話なら聞きます。何が不安なのか話してください」

 ここ数日ずっと、エリザは意識して彼の話を聞いていた。

 治療にまず必要なのは、本音を吐露できる環境だろうと思えた。助けたいので、可能な範囲でいいのでどんなことでも相談してください、と初日に彼には伝えた。

 父から『助けてくれる強い魔法使いだ』と聞かされている効果もあるようだ。

 ジークハルトは、できるだけ答えようと努力してくれているのは感じた。

「……会場でヘマをして、父や周りの者達に迷惑をかけてしまったらどうしよう、と、いつも不安になります」

 女性に恐怖してしまうのは、ジークハルト自身が望んでいるものではない。

 改めてそれに気付かされた気がした。

(そう、か。彼自身も困っているんだな)

 全部が全部ヘタレじゃなかったのかと反省して、エリザは真剣に考えて助言してみる。
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