男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
「まず安心いただきたいのは、公の場で家族の顔に泥を塗るような行動に出る令嬢はいないかと。貴族の作法について本を読みましたが、身分が上の者に急に触れるのもマナー違反なのでしょう?」
「そうですね、基本的には」

 ジークハルトが、考えるような顔で言う。

「まぁな。基本的にはそうだな、基本的には」

 続いてルディオが言った。

「『基本的』を連呼してくるなぁ……」
「エリオには言ったと思うけど、これまでジークを追い詰めてきた女性達は、ほんとすごかったんだ」
「何か特別なフェロモンでも出てるの?」

 思わず疑問を口にしたら、ジークハルトが咳込んだ。

「そこまで女性達が熱狂するのも、すごいよね」
「いや、俺としてはさ、本人がそばにいるのに、ずばっと疑問を口にしちまうエリオって偉大だと思うわ……」

 だって、実感がないのだ。

 エリザは女性ではあるけれど、ジークハルトもただの一人のイケメンにしか思えない。

「どちらにしろ、公の場所なら一人にならなければ問題ないと思うな」
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