男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
 【死の森】に近づくほど建物は減り、とうとう人の姿はなくなる。

 だが家まで続く道の森の入り口に、ふと一人の騎士が立っていることに気付く。彼が気付いて手を上げた。

「よっ、エリオ」

 それは、ここにきて初めてできた友達だった。

 一つ年上の十九歳、ルディオ・バーナー。短い癖毛のブラウンの髪と、活発そうな輝きを宿したとび色の瞳をしている。

 そして彼は、唯一『エリオ』が女性であることを知っている人間でもあった。


 彼との出会いは、約二年前にエリザが来て少しの時だった。

 騎士の訓練生だった彼が友人らと歩いていたところ、森から飛び出してきた魔物に襲われたようなのだ。

 友人をどうにか逃がした彼は、大きな獣型の魔獣に剣ごとのしかかられて危険な状態だった。

 そこに、エリザが登場したのだ。

『よいしょーっ』

 掛け声と共に、魔物の横っ面を両足で飛び蹴りした。そして倒れたところで、直に手で触れて魔物を消滅させた。
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