男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
(あ、また笑顔……)

 初日にたびたび見かけていたのだが、二日目、三日目にはよく笑うようになっていた。

 信頼されているのが分かる。たぶん、強い魔法使いという肩書きが尊敬させているのだろう、とエリザは推測している。

(なんというか、接していると中身が子供っぽいんだよな)

 女性恐怖症で、日々、屋敷の中でも女性使用人をできるだけ避けている。たびたび出くわすと悲鳴を上げ、なんだ誰々かというのは毎度のことだ。

 そういうところも、大人の男性というより子供なイメージがあった。

 子供だと思えば、嬉しそうに笑う彼の美貌も慣れたものだ。

(彼は私を男だと思っているし、私も誤解するような乙女心はないし)

 すると、横からルディオが腕をつついてきた。

「ジークに微笑まれて表情が死ぬのも珍しい」
「表情は死んでないし、ただちょっと考え事してただけじゃん」

 その手を軽く叩き落し、前向きになったジークハルトへ向き直る。
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