男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
6章 治療係、嫡男様と舞踏会へ
 初めて足を踏み入れた王宮は大きく、どこもかしこも煌びやかで落ち着かなかった。

(そして、見られている視線が大変気になる……)

 ただの治療係なのに、ラドフォード公爵とジークハルトと同じ馬車に乗せられたせいだろうか。

 王宮で降りる時、好奇心いっぱいの視線を向けられて胃が痛かった。

 治療係になったという一件は、既に大きく広まっているようだ。歩いている最中もずっと、刺さるような視線を覚えていた。

 黒い異国のマントコートに加え、真っ赤な髪と目もかなり目立っている。

(いつも通り外を歩く時みたいにフードを被りたいけど、さすがに警備万全な王宮でそんなことできないしな……)

 【赤い魔法使い】の正装だと思われているのか、警備を通る際にマントコートを取るようにとは言われなかった。

 ただ『あなたがいた国では、他の魔法使いもその恰好を?』とは不思議がられた。

(そして……とくに気になるのは、斜め前)

 エリザは、高い位置で揺れる栗色の髪の後頭部な眺めた。
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