男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
(臨時の専属医、ねぇ)
ジークハルトの女性恐怖症は、関係者以外には伏せられている状態だ。
治療係だとは公言はできないので、そのような説明になっているらしい。エリザは、口の中にあったチョコレートケーキを飲み込む。
「はぁ。私が【赤い魔法使い】で、専属医の〝エリオ〟です」
「『エリオ』という名前で活動していらっしゃるのですね。では、私もそう呼ばせていただきましょう」
そう述べた彼が、熱い胸板に手を添えて言う。
「私はハロルド・ミュンゼン、爵位は伯爵。ジークハルトの上司で、第一宮廷近衛騎士の隊長になります。どうぞ、ハロルドとお呼びください。貴殿の話は、常々ジークとルディオから聞いています。随分愉快なお方だ、と」
彼は〝事情〟を知っている側だったようだ。
(まぁ、こんなに人が多いところでは言えないよな)
随分大きなハロルドを観察する。面白げに目を細めてくる彼の眼差しに、慣れず身じろぎした。
ジークハルトの女性恐怖症は、関係者以外には伏せられている状態だ。
治療係だとは公言はできないので、そのような説明になっているらしい。エリザは、口の中にあったチョコレートケーキを飲み込む。
「はぁ。私が【赤い魔法使い】で、専属医の〝エリオ〟です」
「『エリオ』という名前で活動していらっしゃるのですね。では、私もそう呼ばせていただきましょう」
そう述べた彼が、熱い胸板に手を添えて言う。
「私はハロルド・ミュンゼン、爵位は伯爵。ジークハルトの上司で、第一宮廷近衛騎士の隊長になります。どうぞ、ハロルドとお呼びください。貴殿の話は、常々ジークとルディオから聞いています。随分愉快なお方だ、と」
彼は〝事情〟を知っている側だったようだ。
(まぁ、こんなに人が多いところでは言えないよな)
随分大きなハロルドを観察する。面白げに目を細めてくる彼の眼差しに、慣れず身じろぎした。