王太子の婚約者は、隣国の王子に奪われる。〜氷の公女は溺愛されて溶けていく〜
婚約者の役目とは?
「それで、なにか手がかりはあったのか?」
「それがいくら調べても、例のものは関所を通った形跡がないのです」
ラルサスが尋ねると、商人の格好をした男が答えた。
彼は留学中過ごすための館を貴族街の一角に借りた。
その書斎で、自国の情報員の報告を受けているところだった。
ラルサスは父王からの依頼で、留学の傍ら、密輸の調査をすることになっていた。
調査するうちに、どうやら、ここファンダルシア王国の高位貴族がかかわっているという疑いが出てきたからだ。
国として、一度、ファンダルシア王国に抗議を入れているのだが、証拠がないと突っぱねられた。
それにも、くだんの高位貴族が関わっているのかもしれない。
仕方なく、証拠集めをしているというわけだ。
「そうは言っても、すべての輸出物はこの国を出る際と、うちの国に入る際にチェックを受けているはずだろ?」
「そうです。われわれ側では流入元を辿れなかったので、こっちで調査していたのですが、やはりどこにも痕跡がないのです」
男の言葉に、ラルサスは顎に手を当て、思考した。
フィルは難しい話は退屈だと、ふよふよと窓から外へ出ていってしまった。
「出入りの形跡がないということは、関所を通らないルートで持ち込まれたか、チェックされていないかだな」
ラルサスが言うと、情報員はうなずいた。
「そうですね。ただ、この国との国境はハーネ大河で区切られているので、こっそり渡るのは困難かと。もちろん、見張らせてはいますが」
「だとすれば、やはりチェックされていない荷物か。ならば疑いどおり貴族が絡んでる可能性が高いな」
高位貴族の荷物なら、チェックも甘くなるだろうとラルサスは思った。
「そうですね。ラルサス様がここに居をかまえてくださったおかげで、貴族街に出入りしやすくなりました」
「貴族の荷物を重点的に探ってくれ。私もそれとなくあやしい人物を探るよ」
「そうしていただけると助かります」
それには苦手な社交を頑張らなければならないと思い、ラルサスはそっと溜息をついた。
*――***――*
ラルサスは授業で習った古アダシヤ王国の歴史に興味を持ち、調べてみようと図書館に赴いた。
ここの図書館はつねに利用客が少なかったが、かなりの確率でシャレードに会えた。ラルサスは目を走らせてシャレードを探した。
残念ながら、今日はいないらしいと落胆する。
気を取り直し、歴史書の棚へ行くと、そこにシャレードがいた。
ラルサスの心が躍った。
「シャレードも古アダシヤ王国について調べているのですか?」
「それがいくら調べても、例のものは関所を通った形跡がないのです」
ラルサスが尋ねると、商人の格好をした男が答えた。
彼は留学中過ごすための館を貴族街の一角に借りた。
その書斎で、自国の情報員の報告を受けているところだった。
ラルサスは父王からの依頼で、留学の傍ら、密輸の調査をすることになっていた。
調査するうちに、どうやら、ここファンダルシア王国の高位貴族がかかわっているという疑いが出てきたからだ。
国として、一度、ファンダルシア王国に抗議を入れているのだが、証拠がないと突っぱねられた。
それにも、くだんの高位貴族が関わっているのかもしれない。
仕方なく、証拠集めをしているというわけだ。
「そうは言っても、すべての輸出物はこの国を出る際と、うちの国に入る際にチェックを受けているはずだろ?」
「そうです。われわれ側では流入元を辿れなかったので、こっちで調査していたのですが、やはりどこにも痕跡がないのです」
男の言葉に、ラルサスは顎に手を当て、思考した。
フィルは難しい話は退屈だと、ふよふよと窓から外へ出ていってしまった。
「出入りの形跡がないということは、関所を通らないルートで持ち込まれたか、チェックされていないかだな」
ラルサスが言うと、情報員はうなずいた。
「そうですね。ただ、この国との国境はハーネ大河で区切られているので、こっそり渡るのは困難かと。もちろん、見張らせてはいますが」
「だとすれば、やはりチェックされていない荷物か。ならば疑いどおり貴族が絡んでる可能性が高いな」
高位貴族の荷物なら、チェックも甘くなるだろうとラルサスは思った。
「そうですね。ラルサス様がここに居をかまえてくださったおかげで、貴族街に出入りしやすくなりました」
「貴族の荷物を重点的に探ってくれ。私もそれとなくあやしい人物を探るよ」
「そうしていただけると助かります」
それには苦手な社交を頑張らなければならないと思い、ラルサスはそっと溜息をついた。
*――***――*
ラルサスは授業で習った古アダシヤ王国の歴史に興味を持ち、調べてみようと図書館に赴いた。
ここの図書館はつねに利用客が少なかったが、かなりの確率でシャレードに会えた。ラルサスは目を走らせてシャレードを探した。
残念ながら、今日はいないらしいと落胆する。
気を取り直し、歴史書の棚へ行くと、そこにシャレードがいた。
ラルサスの心が躍った。
「シャレードも古アダシヤ王国について調べているのですか?」