ハライヤ!
ど、どうしよう。
このまま一緒に走ってたら、何をされるか分からない。誰か、誰か助けて。
だけど頭の中が真っ白になったその時。

「そこまでです!」

まるで助けてという願いに答えるように、不意に前から聞こえてきた、凛とした声。
見ると道路の先には、今朝声をかけてきたもう一人。ツインテールの女の子が立っていた。

ひょっとして、あの子も仲間? あたしを、挟み撃ちにするつもり⁉

だけどツインテールの子はあたしに目もくれず、隣を走る彼女にスッと詰め寄った。

「浄!」

ツインテールの子は、さっきまで私と一緒に走っていた精気の無い彼女の胸に手を当てて、何か叫んだ。
すると次の瞬間、その手から光が放たれて。それが段々と大きくなっていく。

な、ななな何これっ⁉

「ア、アア……」
「あなたはもう十分走りました。苦手なマラソンを頑張り続けて、立派でしたよ。だからもう、ゴールしてもいいんです。きっと皆、笑顔で迎えてくれますから」

放たれていた光はだんだんと小さくなっていき、隣を走っていたセミロングの彼女の輪郭が、徐々にぼやけていく。

そして光が完全に消えた時、もうそこに幽霊の姿はなく。ツインテールの女の子と、腰を抜かして道路にペタンと座り込んだあたしだけが残されていた。
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