ハライヤ!
水原知世、幼少期。 修行場
◇◆◇◆
祓い屋の里に引っ越して来てから1ヶ月。ここでの生活もだいぶ慣れてきた。
悟里さんが言っていた通り、里の人はわたしのような見える人を差別しない。
住んでいるのはおじいちゃんおばあちゃんが多いこともあって、わたしはまるで孫みたいに、みなさんから可愛がられている。
そして、さすが祓い屋のプロを育てる里。家の裏山には修行場と呼ばれる広場があるの。そして日曜日の今日、わたしは悟里さん指導の元、除霊の特訓をしていた。
「それじゃあ確認するけど。知世ちゃん、霊を成仏させたい時は、どうするんだっけ?」
伊達メガネをかけて先生モードになっている悟里さん。
どうやら先生と言ったらメガネのイメージがあるみたいで、修行の時はいつもこのスタイルなの。
対してわたしは上下ともジャージ服。
ピンと背筋を伸ばして、悟里さんの出す問題に答える。
「はい、手に意識を集中させながら、心の中で『成仏してください』、『安らかに眠ってくださいって』念じながら、『浄!』って言います」
『浄』は『浄化する』って意味で、霊をあるべき所に還すことができるの。
慣れた人だとわざわざ声に出さなくても成仏させられるんだけど、ちゃんと言葉にした方が効果があるって、前に教えてもらった。そうすることで、術に力が宿ってパワーアップするんだって。
「正解。だけどこれだけですべての霊を成仏させられるわけじゃないね。例えば我を忘れて人に危害を加える悪霊は、この成仏してくださいって声を聞いてはくれないから、まずは暴走を止めなくちゃいけない。そういう時は、どうしたらいい?」
「攻撃術の『滅』を使って、悪霊を弱らせます」
『滅』の使い方もほとんど『浄』と同じ。相手に手を向けて、声に出すの。
ただ『浄』と違うのは、成仏してくださいって思うんじゃなくて、攻撃をイメージしなくちゃいけないこと。
わたしの場合、指先から矢を放つようなイメージをしているけど、こっちは『浄』よりも苦手なんだよね。
他にも術はたくさんあるけど、今習っているのはこの二つ。
『浄』が使えないと成仏させられないし、『滅』が使えないといざという時に身を守れないから、祓い屋はみんな最初にこの二つを覚えるそうだ。
「よくできました。それじゃあ今日は実戦訓練をしてみるけど、風音はまだ来ない……」
「ごめーん、遅れたー!」
声のした方に目を向やると、山道の向こうから、私と同じくジャージを着てリュックを背負った風音くんが、こっちに駆けてくる。
祓い屋の里に引っ越して来てから1ヶ月。ここでの生活もだいぶ慣れてきた。
悟里さんが言っていた通り、里の人はわたしのような見える人を差別しない。
住んでいるのはおじいちゃんおばあちゃんが多いこともあって、わたしはまるで孫みたいに、みなさんから可愛がられている。
そして、さすが祓い屋のプロを育てる里。家の裏山には修行場と呼ばれる広場があるの。そして日曜日の今日、わたしは悟里さん指導の元、除霊の特訓をしていた。
「それじゃあ確認するけど。知世ちゃん、霊を成仏させたい時は、どうするんだっけ?」
伊達メガネをかけて先生モードになっている悟里さん。
どうやら先生と言ったらメガネのイメージがあるみたいで、修行の時はいつもこのスタイルなの。
対してわたしは上下ともジャージ服。
ピンと背筋を伸ばして、悟里さんの出す問題に答える。
「はい、手に意識を集中させながら、心の中で『成仏してください』、『安らかに眠ってくださいって』念じながら、『浄!』って言います」
『浄』は『浄化する』って意味で、霊をあるべき所に還すことができるの。
慣れた人だとわざわざ声に出さなくても成仏させられるんだけど、ちゃんと言葉にした方が効果があるって、前に教えてもらった。そうすることで、術に力が宿ってパワーアップするんだって。
「正解。だけどこれだけですべての霊を成仏させられるわけじゃないね。例えば我を忘れて人に危害を加える悪霊は、この成仏してくださいって声を聞いてはくれないから、まずは暴走を止めなくちゃいけない。そういう時は、どうしたらいい?」
「攻撃術の『滅』を使って、悪霊を弱らせます」
『滅』の使い方もほとんど『浄』と同じ。相手に手を向けて、声に出すの。
ただ『浄』と違うのは、成仏してくださいって思うんじゃなくて、攻撃をイメージしなくちゃいけないこと。
わたしの場合、指先から矢を放つようなイメージをしているけど、こっちは『浄』よりも苦手なんだよね。
他にも術はたくさんあるけど、今習っているのはこの二つ。
『浄』が使えないと成仏させられないし、『滅』が使えないといざという時に身を守れないから、祓い屋はみんな最初にこの二つを覚えるそうだ。
「よくできました。それじゃあ今日は実戦訓練をしてみるけど、風音はまだ来ない……」
「ごめーん、遅れたー!」
声のした方に目を向やると、山道の向こうから、私と同じくジャージを着てリュックを背負った風音くんが、こっちに駆けてくる。