ハライヤ!
「今みたいに相手の体力を大きく削ることができれば霊を浄化できるし、危険は少なくなる。ただトモの『滅』は威力が低いから、これくらいしかダメージを与えられないんだ」

画面に現れた次のモンスターに攻撃したけど、今度はあまりきかなくて。
体力は7割くらい残っていた。

「そ、それはやっぱり、わたしの攻撃は威力が低くてダメダメってことなの」

分かってはいたけど、改めて言われたら泣きたくなる。
だけど風音くんは、言葉を続けた。

「まあ威力が低いってのはその通りなんだけど、大事なことを見落としてるよ。昨日トモは、ろくにダメージを与えていない相手を浄化させたでしょ、しかも詠唱無しで。あれってすごいことなんだから。要はこんな感じ」

再びゲームに目をやると、さっき使ったよりも強力な、ハイパーなボールを敵に投げつけた。

敵の体力はまだだいぶ残っていて、きっとさっき使ったボールだと捕獲できなかっただろうけど。
ハイパーなボールは見事に相手を捕獲することに成功した。

けどこれって、どういうこと?

「つまりね。トモの攻撃は確かに弱いけど、そのかわり浄化の力は強いってこと。昨日、まだ全然ピンピンしてたぬいぐるみを浄化させたのが、良い証拠だよ。もしかしたら浄化だけなら、師匠より上手いかもしれない」
「悟里さんより?」

そんなこと言われても信じられない。だけど言われてみたら確かに、まだ元気だったぬいぐるみは浄化できてたわけで。
わたしに、そんな力があるの?

ただ、もし本当に浄化の力が強かったとしてもだよ。

「それでも、一体浄化するのがやっとだった。風音くんは、残りを全部やっつけられたのに」
「それはほら、俺の方がずっと前から修行してるもん。そんなにすぐに追い越されはしないよ。だけどゴメン、トモの気持ちを考えないで、守ってやるなんて言って。あの後師匠と電話で話したら、こっぴどく怒られたよ」

そんなことがあったんだ。
悟里さん、昨夜は何も言ってこなかったのに。

「トモはもっと、強くなりたいんだよな。なら俺も協力する。もう守ってやるなんて酷いこと、絶対に言わないから、許して」

すると風音くんは勢い良く頭を下げてきて。
それを見たわたしは、あわあわとあせっちゃう。

「か、風音くんは悪く無いじゃない。許すから、頭上げてよ」
「良かったー、許してくれるんだね。けどさ、もしも本当に危なくなったら、その時は頼ってくれよな。前に師匠が言ってたぜ。誰かに頼れるのも、強さなんだって」

え、そうなの?
危ない目にあった時、悟里さんみたいに自分で敵をやっつけられるのが強さなんだって思ってたけど……。
頼っても、良いのかな?
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