ハライヤ!
水原知世side カラオケ店
◇◆◇◆
やって来たのはカラオケ店。
メンバーは私と葉月君の他に、発案者である松木さんを含む女子が三人います。
スタッフさんに案内されて部屋に通されたは良いですけど、どこに座れば良いのかも分からずに。
佇んでいると、松木さんが声をかけてきます。
「水原さん、何突っ立ってるの? 早く座りなよ」
「は、はい。ええと、カラオケでも上座や下座ってあるのでしょうか?」
「ははは、何言ってるの? 水原さん、意外と冗談うまいね」
「は、はあ……」
とりあえず椅子の隅っこに腰を下ろすと、反対側に座った葉月君が、『上手くやりなよ』と目で訴えかけてきます。
もう、あなたは私の保護者ですか? 私は小さな子供じゃありませんよ。
「水原さんは何歌う? 好きな曲入れていいよ」
「あの、実はカラオケに来たのは初めてで、勝手がわからないので後で良いです」
「あ、そうなんだ。じゃあ、もしかして葉月君も初めて?」
「俺は向こうにいた頃に何度か。曲入れていい?」
四角い機械を、慣れた手つきで操作する葉月君。
すると私でも何となく聞いた事のあるような曲が流れはじめたのですが、途端に松木さんが立ち上がりました。
「あ、この曲あたしも得意なの。デュエットしていい?」
「いいよ、一緒に歌おう」
二人してマイクを手に取り、きれいな歌声を響かせます。
それからみんな代わる代わる歌っていって。
私も一曲歌いましたけど、自分でも音程を外してるってわかりました。
「聞き苦しくてすみません。歌は苦手なのです」
「あー、別にいいよ。そういやさ、あたし達カラオケの様子をSNSにアップしようって思ってるんだけど、水原さんもどう?」
「ごめんなさい、SNSはやっていなくて。そもそもカメラの使い方も知らないのですけど」
「水原さんって、本当に令和の人? 昭和からタイムスリップしてきたんじゃないの?」
それに近いかもです。
小学校の途中からコンビニも無い山奥の集落で暮らしていて、スマホを持ったのも今年に入ってから。
しかも通話以外の機能はほとんど使った事がないのですから。
「試しに自撮りしてみたら? ほら、髪もこうやって整えたら、写りがよくなるよ」
自撮りですか。そういえば、やったことはありませんね。
松木さんに髪をいじられ、自撮りの方法を教わって、パシャ!
撮れた写真を見てみると……わ、ちょっと髪を分けただけで、表情が明るく見えます。
松木さん、本当に色んなことを知っていますね。
「へえ、トモってばよく撮れてるじゃない。可愛いよ」
「ちょっと、勝手に覗き込まないでください。あと、近いです」
グイッと寄ってきた葉月君の頭を、慌てて押し退ける。
この人は距離が近すぎて困りますよ。
「二人とも仲いいね。それにしても自撮りのやり方も知らないなんて。水原さんって、何にも知らないのね。……笑えちゃう」
私達を見ながら、にいっと目を細める松木さん。
けど、何でしょう。今一瞬、寒気がしたような……。
「さ、次の曲入れよっか。葉月君、もう一回デュエットして~」
猫なで声を出しながら、葉月君の腕に自分の腕を絡める山本さん。
さっきの寒気は、きっと気のせいですね? せっかく来たのですから余計なことは考えずに、歌を聞きましょう。
そうして二人のデュエットに耳を傾けましたけど、つい集中しすぎて。
いつの間にかスマホに次の仕事の連絡が入った事に、しばらく気づきませんでした。
やって来たのはカラオケ店。
メンバーは私と葉月君の他に、発案者である松木さんを含む女子が三人います。
スタッフさんに案内されて部屋に通されたは良いですけど、どこに座れば良いのかも分からずに。
佇んでいると、松木さんが声をかけてきます。
「水原さん、何突っ立ってるの? 早く座りなよ」
「は、はい。ええと、カラオケでも上座や下座ってあるのでしょうか?」
「ははは、何言ってるの? 水原さん、意外と冗談うまいね」
「は、はあ……」
とりあえず椅子の隅っこに腰を下ろすと、反対側に座った葉月君が、『上手くやりなよ』と目で訴えかけてきます。
もう、あなたは私の保護者ですか? 私は小さな子供じゃありませんよ。
「水原さんは何歌う? 好きな曲入れていいよ」
「あの、実はカラオケに来たのは初めてで、勝手がわからないので後で良いです」
「あ、そうなんだ。じゃあ、もしかして葉月君も初めて?」
「俺は向こうにいた頃に何度か。曲入れていい?」
四角い機械を、慣れた手つきで操作する葉月君。
すると私でも何となく聞いた事のあるような曲が流れはじめたのですが、途端に松木さんが立ち上がりました。
「あ、この曲あたしも得意なの。デュエットしていい?」
「いいよ、一緒に歌おう」
二人してマイクを手に取り、きれいな歌声を響かせます。
それからみんな代わる代わる歌っていって。
私も一曲歌いましたけど、自分でも音程を外してるってわかりました。
「聞き苦しくてすみません。歌は苦手なのです」
「あー、別にいいよ。そういやさ、あたし達カラオケの様子をSNSにアップしようって思ってるんだけど、水原さんもどう?」
「ごめんなさい、SNSはやっていなくて。そもそもカメラの使い方も知らないのですけど」
「水原さんって、本当に令和の人? 昭和からタイムスリップしてきたんじゃないの?」
それに近いかもです。
小学校の途中からコンビニも無い山奥の集落で暮らしていて、スマホを持ったのも今年に入ってから。
しかも通話以外の機能はほとんど使った事がないのですから。
「試しに自撮りしてみたら? ほら、髪もこうやって整えたら、写りがよくなるよ」
自撮りですか。そういえば、やったことはありませんね。
松木さんに髪をいじられ、自撮りの方法を教わって、パシャ!
撮れた写真を見てみると……わ、ちょっと髪を分けただけで、表情が明るく見えます。
松木さん、本当に色んなことを知っていますね。
「へえ、トモってばよく撮れてるじゃない。可愛いよ」
「ちょっと、勝手に覗き込まないでください。あと、近いです」
グイッと寄ってきた葉月君の頭を、慌てて押し退ける。
この人は距離が近すぎて困りますよ。
「二人とも仲いいね。それにしても自撮りのやり方も知らないなんて。水原さんって、何にも知らないのね。……笑えちゃう」
私達を見ながら、にいっと目を細める松木さん。
けど、何でしょう。今一瞬、寒気がしたような……。
「さ、次の曲入れよっか。葉月君、もう一回デュエットして~」
猫なで声を出しながら、葉月君の腕に自分の腕を絡める山本さん。
さっきの寒気は、きっと気のせいですね? せっかく来たのですから余計なことは考えずに、歌を聞きましょう。
そうして二人のデュエットに耳を傾けましたけど、つい集中しすぎて。
いつの間にかスマホに次の仕事の連絡が入った事に、しばらく気づきませんでした。