甘いものが嫌いな後輩くん
「面白かったですか? 先輩」
「うーん。まだなんとも」
「じゃあもっかい行きましょう」
「え、あ、うん。わかった」
その日から私と後輩くんは食後はゲームをして遊ぶようになった。
「先輩。何やってるんですか?」
「観葉植物になりきってる」
部屋の隅にある観葉植物の草に紛れショットガンを構える私をくすくすと笑う後輩くん。
「バレバレですよ先輩」
「そう? じゃあ怖いからトイレにこもってようかな」
「あートイレはやめた方がいいですよ、先輩。逃げ場がないんで。この小窓から投げ物を投げられたら終わりですよ」
「そっか。わかった」
ひとつひとつ教わるごとに自分にとってその戦いが有利なものか、不利なものかを考え、そして失敗から学んでいく。撃ち合いに関してもただ撃ち合うわけではなく、いかに有利なポジションから狙撃をするか、はたまたしっかりと自分の身を守れる遮蔽があるか。考えることは山ほどある。
「そろそろ移動しましょう」
「うん」
後輩に先導されるようにマップに記された場所へ向かって走る。残存8人。ゲームも終盤。皆がどこかで確実に勝てる一瞬の隙を探して身を潜めている。
「この家にしましょう」
小さくなったマップを移動するのは毎度のことながら緊張感が伴う。敵が潜伏していないか注意しながらも周りからの狙撃にも気をつけなければならない。さっと割れた窓から侵入し部屋の隅々を二人でクリアリングしていく。
「先輩!」
突然鳴り響いた重い銃声にダウンする後輩くん。敵は一人。すかさず銃で応戦するもあまりダメージには繋がらない。敵は小部屋に逃げ込み回復キットを使用している様子だ。だがあそこは確かにトイレだ。ドアは一つで窓はない。そして天井側には小さな換気口。
私はすかさず持っているすべてのグレネードを投げ込んでいく。けたたましい爆発音と共にながれるキルログにホッと一息つきダウンした後輩くんを助けに駆け寄った。
「僕はこういう先輩がちょっと怖いです」
敵に回したくはないですね。という後輩くんに言葉を返す余裕はなかった。ドキドキとうるさい心臓に震える手。これは恐怖か、それとも敵に勝った高揚感なのか。わからないまま次の戦闘がはじまる。この世界に待ってなんて通用しない。戦いが終わった瞬間こそが敵にとってのチャンスになるからだ。どんな状況でも戦う以外の選択肢はない。やらなければやられる。そんな世界で私たちは戦う。ただただ貪欲に、勝利を目指して。