甘いものが嫌いな後輩くん
お出かけの時間
バイト時間を以前のように学業、私生活に影響が出ない程度に減らせば生活はとても豊かになった。そして無駄な出費は忙しさからの悪循環だったことに気がついた。
あれから夕食は後輩くんと二人で食べることが日課になった。私が作り後輩くんが後片付けをする。そしてその後二人で1.2時間ゲームや動画鑑賞を楽しむ。そんな毎日が心地よく過ぎていく。
「先輩! 忘れ物はないですか?」
「大丈夫!」
そして今日は待ちに待った日曜日。水族館へ行く日。
「それじゃあ行きましょう、先輩」
「うん」
最寄駅からバスで30分。酔い止め対策にミントタブレットを携帯し苦手なバスに挑む。しかしさすが連休。バスの混雑具合もなかなかだ。ぎゅうぎゅうに車内に圧倒されてしまう。それに頑張って乗り込もうと一歩踏み出すとぐっと肩を掴まれた。
「先輩。次のバスを待ちましょう」
「う、うん」
私たち二人を置いてドアが閉まる。私が躊躇してしまったから気を遣わせてしまったのかもしれない。
「ご、ごめんね」
「いいんですよ。それよりこれ、見てくださいよ」
差し出されたスマートフォンの画面に目を凝らす。
「次のアップデート情報が公開されたんです。新マップが増えるみたいですよ!」
私がゲームを始めてから後輩くんとの会話が増えた。共通の話題というものだろうか。
「今度の舞台は海底らしいです!」
「海底!」
新マップのPVには鮮やかな海の魚たちに加え沈没船や財宝などプレイヤーの心をグッと掴むような要素がいくつも描かれている。
「すごいね」
「楽しみですね」
「ね!」