甘いものが嫌いな後輩くん
そう話しているとあっという間に次のバスが来た。先頭に並んでいたこともあり前の方の席に座ることができた。
「水族館楽しみですね」
「うん!」
水族館の公式ホームページを眺めながら心が躍る。
「そういえば最近新しい水族館も出来たそうですがこっちの水族館で良かったんですか?」
「うん。新しい水族館は遊園地がメインって感じで。こっちの方が水族館って感じで私は好き」
でもせっかく出かけるのなら新設の水族館の方が良かっただろうか。
「先輩は水族館が好きなんですね」
「え、あ、うん。好きだよ」
前の方の席に座れたからか、それとも後輩くんとの会話で気が紛れたからかはわからないけれど、バス車内では思ったほど酔うことなく無事に水族館前に到着した。
バスを降りると香る潮の匂いに気分が上がっていく。
「海だ」
「いい香りですね、先輩」
「うん! とっても食欲を刺激する匂いだよね……」
「せ、先輩。そこはラーメン屋ですよ」
近くのラーメン屋さんから漂う香りにつられる私を必死に止める後輩くん。
「先輩、今日は海鮮丼を食べるって」
「うーん……」
海鮮丼は食べたい。しかし酔うことを想定してあまり朝食を食べていなかった私にこの匂いは耐えられない。
「ラーメンも海鮮丼も食べる!」
「お、おう」
私は誘惑に負けた。
「いらっしゃいませー」
店内はお昼前にもかかわらずそこそこ席が埋まっていた。小さな2人掛けのテーブル席に案内されメニューを開く。
「メニューはお決まりですか?」
「塩ラーメン1つ」
「僕は醤油ラーメン。煮卵とチャーシュー追加で。あと餃子もお願いします」
「畏まりました。ご注文繰り返します」
流石男子高校生。朝食後だというのによく食べる。繰り返される注文を聞きながらメニューをぼんやりと眺める。
「以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「少々お待ちください」
きびきびと働く彼女はアルバイトだろうか。
「飲食は大変そうだな」
「ん?」
「あ、いや、こういうところでバイトするのは大変そうだなーって思って」
「僕は結構楽しそうって思います」
「そう?」
「はい」
確かに後輩くんが働く姿はなんとなく想像がつく。