甘いものが嫌いな後輩くん
ぐったりとソファに横になる私のために氷枕を用意する春くん。
「全く。先輩はいつも無理しすぎなんですよ」
「無理なんかしてないよー」
「嘘です。最近僕がゲームを辞めて寝る頃になってもずーっと部屋の明かりが付いてるの、知ってるんですから」
「うう」
確かに最近は課題やテスト勉強が重なり睡眠時間を削ってこなすことが増えていた。ここ数日の体調不良は雨のせいではなく風邪気味だったのかもしれないと今になって思う。
「馬鹿は風邪ひかないはずなのにぃー」
「どの口が言ってるんですか!」
鳴り響く電子音に体温計を確認すれば余計に具合が悪くなってきた。
「春くんー。熱がこんなにあるよー」
「どうぞ。冷たくて気持ちいいですよ」
タオルの巻かれた氷枕を受け取り頭の下に敷けば春くんの言う通り、ひんやりと冷たくて気持ちがいい。
「今日明日はゆっくり休んでくださいね」
「うんー」
春くんは優しくて私の自慢の彼氏くん。
「あ、そう言えば先輩が楽しみにしてた新発売のジェラート、今日発売ですよ」
「えええ。そうだっけ」
「買ってきましょうか? 先輩」
「うーん。たべたいけど今はそばにいてほしい」
手を伸ばしてぎゅっと抱きつけば大好きな匂いが、大好きな手が優しく頭を撫でてくれる。
「甘えん坊な先輩も可愛いですね」
「へへへ」
「先輩」
「!」
不意に唇を奪われ目を見開いた。
「大好きです。先輩。
風邪が治ったら、覚悟してくださいね」
「!」
彼氏くんは実はかわいい後輩と言うなの羊の皮を被った狼くんでした、ということをほんの少し期待してしまうのはきっと、風邪のせい。