甘いものが嫌いな後輩くん
狼くんの時間
「春くん! 愛してるゲームしよ!」
とある休日。いつもしてやられてばかりいる春くんに私からこんな提案を持ちかけた。
「愛してるゲーム?」
「そう。愛してるって交互に言って照れさせた方が勝ちなの。私に触れるのはなしよ。わかった?」
そうルールを簡単に説明する。たまには先輩の余裕というものを見せつけなければ、という謎のプライドが要塞のように立ちはだかる。
「えっと……。つまり先輩は言葉責めされたいってことですか?」
「そ、そうじゃなくて!」
「あ、照れてる」
「こ、これはノーカンよ!」
くすくすと笑う春くんにそんな要塞は呆気なく崩れ落ちていく。
「まぁいいですよ。じゃあ僕からいきますよ」
さっきまで散々顔をくしゃくしゃにして笑っていた春くんがスッと、まるでスイッチが切り替わるように顔色が変わった。
「先輩。愛してます」
「私も。愛してる」
そして繰り返される愛の言葉。
「この世で一番愛してます。先輩」
「私だって。ずっと愛してるよ、春くん」
しかしこれは回を重ねれば重ねるほどに恥ずかしい。照れを悟られないように平然を装ってはいるが気を抜けば口元が緩んでしまいそうで堪らない。
「今すぐベッドに連れ込みたいくらい愛してます」
「えっと、あー、なんか小腹がすいちゃったなぁ」
その一言にぐっと熱くなる身体を必死に抑え、わざとらしいことを言っておもむろに冷蔵庫から取り出したプリンを頬張り気持ちを落ち着かせる。
「プリンと同じくらい好きよ。春くん」
「プリンより愛してるくせに」
「そ、そんなことないよ。このプリンは特別だもん」
高級チョコレート専門店で買った高級プリン。なんとこのサイズで1個500円もするのだ。滑らかな舌触りと濃厚なチョコレート。これはそんじゃそこらのコンビニスイーツとは違うのだ。
「そんなこと言ってると僕が食べちゃいますよ」
「プリンに嫉妬してるの?」
「っ!」
「あ、照れた? 春くん照れた?」
「まだ照れてないです」
頬を赤く染めいかにも照れているがこんなに面白いゲームを終わらせるのも勿体無くて続けてしまう。