甘いものが嫌いな後輩くん
そんな後輩の声援と共に始まったチュートリアル。走る、しゃがむ、撃つ、ジャンプする。そんな基本動作だけ教えて去っていく教官キャラに絶望する。
「え、ちょっと、チュートリアルってこれだけ? この知識だけで戦場に行けっていうの?」
「習うより慣れろってことですよ、先輩」
「え」
そして始まったゲーム画面に心臓がトクトクと音を立てる。
「それじゃあ行きますか、先輩」
「えええええええ」
後輩くんに先導され飛行船から思い切って飛び立てば眩い光と共に落下していくいくつものプレイヤーが視界に飛び込んできた。
「こ、これ全部ヒトなの?」
「そうですよ。まずは人気のないところに降りて物資を漁りながら操作に慣れていきましょう」
光の集団から離れ着地した先は、小さな民家が立ち並ぶ集落。
「家の中に武器や回復があるので拾ってください」
「わ、わかった!」
ガチャガチャとドアを開け閉めし部屋のものをあれこれ拾い集めていく。その中にレベル1ヘルメットと簡潔な説明の書かれた鍋を頭にかぶり、適当に落ちていたピストルを装備していく。こういうのは宝探しをしているようでほんの少し楽しい。
「うわぁ凄い。トイレまである」
そしてゲーム内の細部まで丁寧に作られた世界に感動してしまう。家の外装、内装、どの家も違う色や形にまるで廃墟探索をしているような気分だ。
「先輩。そろそろ安地に移動しますよ」
「へ? あんち?」
「安全地域です。Mキーでマップを開くと自分の位置と円が見えますよね?」
「うん」
「この円が安全地域です」
「え、それは」
途端に鳴り響く地を鳴るような音と走って、という後輩くんの声に戸惑っていると後ろ側の地面が次々に崩れていくのが見えた。
「ええええええ」
「先輩、早く」
後輩の背中を追って安全地域に向かって走る。刹那、先方の岩陰から人影が見えたかと思えばアニメやドラマでよく聞くような発砲音と共に第一ゲームは幕を閉じた。
「ご、ごめんね」
「最初はみんなそうですよ。安地から安地外を狙うのはよくあることです」
「そ、そっか」
バトルロワイヤル。皆自分が生き残るために必死に戦略を練って行動し、戦って、その先にある勝利を掴み取ろうとしている。このゲーム内にいる100人が同じ目標の中戦っているのか。
「す、凄いね」