甘いお菓子のように

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入社してから早二週間が過ぎた。

ライターさんが書いたアニメの記事の添削を紅子さんに頼まれたため、ずっと画面とにらめっこしていた。

ライターとは外注にお願いしているウェブサイト上で記事を書いてくれる人たちのことだ。

「テンプレートを使って記事を作成してもらうのだけど、時々○ってところをリライト(編集)せずにスルーしてるライターさんもいるんで、そこもチェックしてみてくださいね。なので、先に「○」と検索をかけてから始めると忘れないですよ」

「検索の方法は・・・」

「command+Fです」

「ありがとうございます」

すると、ピコンという音が鳴ったので、わたしはチャットルームに画面を切り替えた。

この会社は、お客さんともライターさん(外注)とも社内でもチャットを使ってやりとりをしていた。

そこには、「今週の金曜日に新入社員の中島里美さんの歓迎会を行いますのでぜひご参加ください」というメッセージが入っていた。

「ひーー!はずかしい」と思わずわたしは口に出してしまった。

紅子さんもそのメッセージを見たらしく「楽しみですね。何かひとこと言うことは考えておいた方がいいですよ」と言われた。

「あ、は〜い」と言うとわたしはまたそのメッセージに視線を戻した。

すると、映画や漫画セクションのメンバーもいっしょに参加するということで、ふいにわたしの心臓が騒ぎ始めた。

「二階堂さんも来るんだ・・・」

そう思ったら、体温が急に上昇して熱を帯びたように体が熱くなった。

紅子さんがわたしをチラ見すると「顔赤いけど大丈夫ですか?そんなに緊張しているのですか?」と言ってきた。

「はい、とっても」

「別に適当に言えばいいですよ。ああゆう場って誰もちゃんと聞いてないですから」

と見当違いのフォローをされてしまった。

「あ、はい、分かりました」と答えるとわたしは画面を切り替え、記事の内容に集中した。

だけど、心の中では「二階堂さんと話せるといいなぁ。いや、なんとしても話しかけよう」と不純なことを考えていた。

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