甘いお菓子のように
彼がいるレジに近づくと彼が若い女性に向かって笑顔を向けている横顔が見えた。

わたしは「まずい」と思うとすぐに目をそらし、進撃の小人のグッズに視線を向けた。

どんなグッズが置いてあるのかくまなく見てる振りをして、耳だけは彼女たちの会話を聞こうとしていた。

「本当に抜けてるよね〜」

「ちょっと間違えただけじゃん」

タメ語で仲良く話す二人の会話が聞こえた。

わたしの前では見せない表情や話し方。

わたしの知らない彼がすぐ後ろにいた。

わたしは、意を決してくじ引き券を取るとレジに置いた。

お客がすぐ目の前に来て驚いた彼がわたしの方を見た。

そして、「あ」という表情をした。

「お疲れ様です」

わたしはクールにそう答えた。

彼も先ほどとは違うテンションで「お疲れ様です」と言うと「何回ですか?」と聞いてきた。

「1回で」

そう答えて会計を済ますと彼がくじの入った箱をレジに置いたので、わたしはくじを引いた。

「げ・・・」

どうやらマスコットが当たったようだった。

彼がレジから出て来ようとしたので「あ、大丈夫です。あとはわたしが勝手に選ぶので」と言って彼を制した。

マスコットの方を見ると1体しか残ってなかった。

しかも、わたしが興味のないキャラクターのマスコット。

わたしはそれを取ると「お疲れ様でした」と彼の方に言ってその場を急いで去った。

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