甘いお菓子のように

3

わたしたちが一緒にいる時間は17時〜18時の1時間しかない。

その貴重な時間でも、わたしたちがやりとりを交わすことはほとんどない。

会話もほとんどしないし、お客がいるときは接客をするか、いないときは補充をするかフェイスアップ(商品の前出し)をしていた。

けど、フェイスアップをするのは決まってわたしの方だった。わたしはレジから離れ、彼と二人っきりになるのを避けていた。

わたしはあの若い女性店員のように彼に積極的に話しかけれない。

本当は「髪切ったんですね!格好いいですよ!」とか「さっきはトングを落としてすいませんでした」とか言いたいのに

喉まで出かかったそれらの言葉が最終的には「まぁ、いいか」という諦めに変わり、結局最後まで言えなかった。

すると、見覚えのある若い女性がわたしの横を通り過ぎた。

彼女は、「梶浦くん!」と言うと彼に近づき「え〜髪切ったんだね!」と茶化した。

彼女は、金曜日に彼といっしょに働く若い女性店員だった。

彼女のようにすんなり言えたら良いのに、どうしてわたしは言えないんだろう。

彼が照れ臭そうに「ありがとう」と答えたのが見えた。

その表情を見て、わたしの胸がズキンと鳴った。
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