甘いお菓子のように
「お菓子ですか?」

「えぇ、食べますか?」

「毎日、コンビニで買って食べますけど。え、紅子さんは?」

「わたしは、普段お菓子は食べないんですよ」

そう答えたあと、彼女は急に何かを言い始めた。

「だから、じぶんの好きなお菓子を好きなだけ買って食べてる子が羨ましいと思う。

羨ましいと思う反面、この子たちは何かを諦めてるんだろうと思う。

健康でいること、美しくありたいこと。

だけど、その子たちはその子たちなりにじぶんの楽しみを分かっている。

お菓子をたくさん食べて思う存分、幸せになれるのだから

それでもいいじゃないかと思う。

でも、本当は分かっているはず。

これは、依存なんだと。

本当は行き過ぎは良くないと分かっているはずなのに

お菓子を食べるのをやめられない。

それは、お菓子を食べるのが楽しいからだけではない。

お菓子を食べるのをやめたら何を楽しみに生きていけばいいか分からなくなるからだ。

だから、お菓子を食べるのをやめるにはそれ相応の覚悟が必要になる。

このままではダメだと今のじぶんを否定し、

じぶんを変えるという覚悟を。

でも、大抵の人はそれができない。

なぜなら、そのお菓子に依存しているから。

今は、かんたんにお菓子が手に入るようになった時代。

そして、魅力的なお菓子にありふれた時代。

たった一つのお気に入りのお菓子でさえ、探すのも困難な時代。

その時代に生まれて、わたしは幸せだと思う反面、

不幸だとも思う。

お菓子を食べ続ければいつかきっと飽きが来る。

同じ味に飽きて次の味も試してその繰り返し。

でも、食べたいと思っていたお菓子はどれも制覇したから

今死んでも後悔はしない、

それくらい、お菓子に満足したら

もう、お菓子の何が好きなのかも分からなくなってきたよ。

何を見てももう食べたいとすら思えない。

わたしは、おかしくなってしまったのだろうか」

「どうしたんですか、急に。ポエムですか?」

急に饒舌になった紅子さんにも驚いたがお菓子についてこんなに熱く語り出すとも思わなかったのでさらにびっくりした。

「これは、紅子さんの実体験ですか?」

彼女はクスッと笑うと「実体験ではないですよ」と答えた。

けど、彼女は思案顔になると「いや、実体験なのかもしれないですね」と答えた。

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