エデンの彼方でいつかまた
憧れていた男が目の前にいる。
しかもその男の部屋だ。
でも、これが最後になってしまう。
最後になるなら……。
瑞希は想いを伝えようと決心する。
「あの、春友さ……」
「云っておくがな」
敬信の言葉が語尾に重なる。
見上げると瑞希の瞳を、真っ直ぐに見つめていた。
「さっきも云ったが、おれは君を探していたんだ。また話したいと思っていた」
敬信の周囲の人間は、笑顔でもどこか裏がある。
すべて損得勘定で動いているのが、当たり前だった。
「だからあの時の邪気のない顔が忘れられなかった。だからな……」
敬信が瑞希を見つめる。
「君に男がいたとしても全力で奪いとるつもりだった」
瑞希の脳内は混乱と動揺で埋め尽くされている。
今、ひょっとしたら自分は告白をされているのだろうか。
「あ、あの、それって…… えっと……」
「あの時、出会っていなければ瑞希とおれはずっと他人だった。しかしこうして未来と繋がった。偶然のまま終わらせたくない」
こんなことがあるのだろうか。
自分はまた、からかわれているのだろうか……。
瑞希は顔を赤らめたまま、質問をした。
「あんな風に……キスとかフリとか。いつもしてるんですか?」
「まさか。勘違いされたら面倒だからな」
「じゃ、じゃあ……わたしは勘違いしても、いいんですか?」
長年の友人である、銀珠さえも家には招かれたことがないと云っていた。
銀珠……。
そういえば悲しそうな表情をしていた。
敬信は言葉を続ける。
「いいぜ。じゃなかったら、家にも呼んだりしない」
敬信は優しく笑った。
「おれの気持ちは伝えたが残念ながら、瑞希の気持ちは含まれていない。突然だったからな。年も離れている」