エデンの彼方でいつかまた
そんな彼が、少しでも自分を気にかけてくれた。

「両親のことも、もう気にしていません。お金にルーズなところがあった両親も、悪かったんです。返済は終わりましたし」

敬信は黙っていたが、やがて口を開いた。

「瑞希。おれは君と一回りも年齢が離れている。こんなおれといるのは、嫌だろうと諦めていたんだ。瑞希が離れても、少しでもおれ自身が傷つかないように」

皮肉が混じるその声が、真摯に瑞希に向き合っている。

「さっきの答え……確かめさせてくれ。嫌だったら、拒否してほしい」

敬信はそっと瑞希の体に腕を回し抱き寄せた。
頬に手を添え、唇を重ねる。

「……」

数秒間、重ねた後に離れる。

「瑞希……」

不遜で不誠実で、弱気とは無縁なはずの強い瞳が、不安色に揺れている。


この男を愛して、悔いはない。


瑞希はそっと、敬信の大きな背中に腕を回す。

「ごめんなさい、敬信さん。不安にさせてしまって……。わたし、やっぱり好きです。敬信さんが。うんこのお兄さんが」

瑞希は涙を浮かべ精一杯、笑顔を見せた。

「今の敬信さんも、憧れのお兄さんも同じ人ですよね。わたしと一緒にいてください。これからも」

敬信は瑞希の体を強く抱きしめた。

「ああ。ずっと一緒にいよう、瑞希。もう離さないからな」

安堵した男の低い声が、瑞希の耳元で精一杯の返答をする。

「瑞希。云っておくことがある。君と通話を切ったあと、ある人物から脅しを受けた」
「え!?」

驚く瑞希に、敬信は人の悪い笑みを浮かべている。

「ケリをつけるか」


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