エデンの彼方でいつかまた
それから数歩遅れて、留乃と同じくらいの年齢の男が姿を現した。
一見、普通のサラリーマンの男に見えるが、堅気ではない。
里河 学武(さとかわ まなぶ)だった。
学武は同じ会社の違う部署の人間だが嫌がらせと、培ってきた格闘技を使った暴力で周囲の人間を黙らせている、という噂がある。
そんな男だった。
「どうしたんだ?」
「この人が、落とし物のスマートフォンを盗もうとしていたの。ポケットに入れようとしていたわ」
留乃が男に云った。
瑞希は慌てて身ぶりてぶりで否定する。
「ちがいます! 忘れものを届けに行こうとしていたんです、ポケットに入れたのは手袋です」
必死に訴えたが学武が睨み、びくりと身を強張らせた。
「忘れものを泥棒か? この掃除女」
「そんなこと、していません!」
「証拠はあるのかよ? 留乃はやっかみをよく受けるからな。おまえみたいな女に」
留乃に目を向けると笑っていた。
楽しそうに……。
ようやく悪夢から逃れたと思っていたのに、またこんなことになるなんて。
誰も自分を信じてくれない。
絶対に白でも留乃が黒だと云えば、それは黒となってしまう。
今までずっとそうだった。
やっと、その理不尽さと苦痛から逃れることができたというのに……!
パニックと恐怖と焦りで震える瑞希の腕から、ブレスレットが落ちた。
一見、普通のサラリーマンの男に見えるが、堅気ではない。
里河 学武(さとかわ まなぶ)だった。
学武は同じ会社の違う部署の人間だが嫌がらせと、培ってきた格闘技を使った暴力で周囲の人間を黙らせている、という噂がある。
そんな男だった。
「どうしたんだ?」
「この人が、落とし物のスマートフォンを盗もうとしていたの。ポケットに入れようとしていたわ」
留乃が男に云った。
瑞希は慌てて身ぶりてぶりで否定する。
「ちがいます! 忘れものを届けに行こうとしていたんです、ポケットに入れたのは手袋です」
必死に訴えたが学武が睨み、びくりと身を強張らせた。
「忘れものを泥棒か? この掃除女」
「そんなこと、していません!」
「証拠はあるのかよ? 留乃はやっかみをよく受けるからな。おまえみたいな女に」
留乃に目を向けると笑っていた。
楽しそうに……。
ようやく悪夢から逃れたと思っていたのに、またこんなことになるなんて。
誰も自分を信じてくれない。
絶対に白でも留乃が黒だと云えば、それは黒となってしまう。
今までずっとそうだった。
やっと、その理不尽さと苦痛から逃れることができたというのに……!
パニックと恐怖と焦りで震える瑞希の腕から、ブレスレットが落ちた。