エデンの彼方でいつかまた
慌てて拾おうとしたが、学武に先に奪われる。
指先でつまみ凝視して眉を歪ませた。

「なんだこりゃ……ブレスレットか? きたねえ」
「触らないで! 返して!」

そのときだった。

「なんの騒ぎだ。うっとうしい」

ひとりの男が現れた。
長身にスーツ。
鋭角的に整った顔立ちの美貌の男だった。
年齢は四十代だろうか。

どこか皮肉めいた瞳が冷たく鋭く、学武を貫いた。
一瞬、怯んだものの婚約者が視界に入り、男に向き直る。

「なんだ、おまえ。関係ないだろ」
「奇遇だな。おれも、おまえような輩は嫌いなんだ。もう帰れ」
「なんだと? このおれに向かって」

恋人の手前、なんとか男らしい様を見せつようとしたのだろう。
拳を繰り出し、男に殴りかかろうとした。
格闘技をしていたという噂どおり、動きにもキレがある。

「ばかな男。誰だかしらないけれど、後悔するのね」

留乃が可笑しそうに笑い、瑞希は悲鳴をあげる。

今まで通りならば、この男も倒されてしまうはずだった。

だが───。

学武の攻撃を難なくかわすと、男の手が伸びて学武の顎を捕らえ掴みあげ、壁に叩きつけた。
足が浮いている。


「これだから、嫌いだと云った」
「……っ!!」


学武は男の腕を掴み足をバタつかせるが、緩ぎもしない。

すごい力だが、男は表情も声のトーンも変わらずにため息をつく。
またか、といった様子だ。

学武はたまらずブレスレットを放り投げ抵抗を続け、瑞希は慌ててそれをキャッチする。
男は平然と学武を掴みあげたまま、放たれたそれに目を向けた。


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