悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「何故、あんな無茶をした」
「無茶って?」
「それすらも分かってないのかよ。まだ浅い池だったから良かったものの、あれが深い池だったら最悪溺れてたんだぞ」
確かに池には入った。だが、ファウラにとって街での生活で川に飛び込む事だってあったのだ。泳げないわけでもない。
今までなら誰も何も言わなかった事を、ルイゼルトは心配の目を向けてくれる事が急に嬉しくなった。自分を大切に想ってくれる存在が居る。そう思うと嬉しさのあまり、顔が綻ぶ。
「陛下、ありがとう。心配してくれて」
「人が心配してるっていうのに、なんだその顔は」
「心配された事が嬉しくて」
本音を伝えると、ルイゼルトはわざとらしく溜め息を零した。
続く言葉には、まだ怒りが滲んでいた。
「――そうやってアイツにも笑って見せたのか」
ルイゼルトにまだ怒られるような事をしたのかと、言葉の意味を考えるが指し示す人物がよく分からない。お茶会の令嬢達には勿論淑女として振る舞ったため、静かに笑みは浮かべたが心安らいだ状態の自然な笑顔は浮かべていない。