悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
強引に塞がれたというのに、唇に触れる温もりは柔らかく、優しく……甘い。
ついばむような口づけに、ファウラの口から吐息が漏れる。離さないというように、ルイゼルトの舌が彼女の唇をなぞる。反射的に体を震わせれば、くすりと笑って唇が離された。
「ファウラは誰のものだ?」
「へい、か……」
「――名前」
名前、その言葉の意味を頭の中で必死に探る。キスされた衝撃が未だに、ファウラの思考を鈍らせる。
(陛下が求めているもの……名前?)
欲しい物がまだかまだかと待っているルイゼルトを前に考えていたところで、はたと気づく。
(出会ってすぐのエルディン様には名前で呼んだのに、陛下には……もしかしてそれで?)
単純な答えにファウラはすぐにその名前を呼んだ。
夫となる人の、大切な人の名前を。
「……ルイゼルト……ううん、ルイ……」
初めて口にしたルイゼルトの名前に、今更恥ずかしくなっていくファウラは赤く染まりきった顔を見られないように両手で覆いたくなるが、その手はルイゼルトに掴まれたまま。