悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「言っておくけど、時間は残り少ない。ファウラ様に話すなら早いうち伝えておくのがいい」
「心配させて自ら突っ込んでいきそうで怖いから、それは伝えないでおく」
「でも、何かあった時じゃ遅いんだよ?!全て食われたら、陛下――君は、人でなくなる」
間違いなく、今はただその未来に向かって突き進んんでいることは、ルイゼルトが一番良く知っている。
逆らえない運命をもがいてきた、ルイゼルト自身が掴んだものなのだから。
首に伸びた茨の痣は、一日ずつ確かに体を蝕んでいく。それでも、自我を保っていられるのは、運命に負けたくないというルイゼルトの強い意思のお陰だった。
「話せば、ファウラ様だって協力してくれるかもしれないんだ。話す価値はあると思う」
「嫌われ者を選んできた俺が、初めて嫌われたくないって思ったんだよ。真実を話して、嫌われて捨てられたらと思うと、俺は怖い。ファウラを失いたくない」
「……分かった。ぎりぎりまで粘ろう」
「すまない、ユト」
「これだから、人間は面倒くさい」
呆れるユトだが、気を取り直すように再び文献を漁り始めた。主のために全てを費やそうとするその姿勢に、ルイゼルトは頭が上がらない思いでいっぱいになる。
瞳に宿る想いはますます大きくなり、チクリと傷む痣を気に留めることもなくユトの部屋を後にした。