悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
4*もっと近くにいたいのに
羽伸ばしの旅へ
*
「ファウラ様、おはようございます。本日の予定の関係上、早急に馬車に乗って下さい」
昨夜、遂に大切に想う人との距離が縮んだ事が嬉しいあまり無意識に顔を綻ばせていたが、扉を勢い良く開けて着替えを済ませたばかりのファウラは、爽やかな声を部屋中に響かせるユトに目を丸くしたまま見つめた。
清々しいユトだが、目の下には真っ黒な隈が刻みこまれていて心配せずにはいられない。
ファウラの心配を感じ取ったが、ユトはその心配される時間も惜しいと言わんばかりに、ファウラを部屋の外へと連れ出した。どこか強引すぎる彼に違和感を感じつつ、言われた通り馬車に乗り込んだ。
乗り込んだ馬車の中には先客が待っていて、向けられた笑顔に胸が跳ねる。
「おはよう、ファウラ」
いつも着ている煌びやかな服装とは違い、身軽そうな軽装で腰掛けるルイゼルトの新鮮な姿に思わず顔を赤らめた。いつも通りの挨拶をしようにも、ぎこちなくなるのを彼が見逃すはずもなかった。
乗り込んできたファウラの腕を引いて、隣に座ったファウラの顎に手を添える。
「これから二人きりの時間が続くというのに、初めからそんな様子じゃ持たないぞ」
見つめてくる紅い瞳に蕩けそうになるのを何とか堪えて、ルイゼルトの隣に座る。彼の言った二人きりの時間というのが、初耳で自分を落ち着かせるためにも疑問を口にする。
「何も分からず馬車に乗ったんだけど、その、これから何処へ行くの?」
「ユトの奴……色々省きやがったな。そんなに早く帰って来いってか」
「なんか疲れてるように見えたんだけど」
「まあ、俺が無理言ったからな。仕事のスケジュール変更させて、これから三日間の旅行に行く」
ワクワクした気持ちを隠せていないルイゼルトは遠慮なくファウラの腰に腕を回し、互いの温もりを感じ合うように、密着して離れない。