悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
「すごい人……」
「国の貿易拠点の一つだからな。常に人で賑わう楽しい街だ」
いつの間にか指を絡ませて繋がれた手に意識を向けてしまえば、ファウラの頬はたちまち赤く染まる。微かな彼女の反応を逃しはしないと、ルイゼルトが顔を覗かせる。
「やっぱり、こうしてファウラとの時間を作って正解だったな」
「ど、どうして?」
「こんな可愛い表情を俺一人が堪能できるんだ。幸せ以外の何物でもないだろ」
「……っ!」
「人が多いから絶対に逸れるなよ?まあ、嫌と言われても俺はファウラの手を放すつもりはないがな」
行くぞと優しく微笑まれてエスコートされながら、初めて訪れた街の道は胸の高鳴りが止まらない。果たしてこれが初めて訪れた街への好奇心なのか、隣を歩くルイゼルトへ向ける想いなのか、嬉しさのあまり考えが鈍るファウラには分からなかった。
ただ、胸の高鳴りの中に安心感が生まれ始めた頃、ファウラは今まで見たことのない品物たちに瞳を輝かせた。
「ルイ!あれは何?」
見たことのない新鮮で熟れた甘酸っぱい香りを漂わせる果実を前に、ファウラは足を止めて指を指した。