悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
賑やかで笑顔が絶えないこの街で生活する人々は、とても幸せそうだ。
「すごく素敵な街ね」
自然と零れたファウラの感想に、ルイゼルトは体を密着させてくる。また少し心臓が跳ねたが、彼の見たこともない安心した表情に黙って寄り添った。
「この笑顔を俺は守りたかったんだ。悪魔王と呼ばれようが、恐れられようが、俺は何としてでも奪われたくはなかった」
「皆、とっても幸せそうね」
「この穏やかな時間を俺は守り続ける。絶対に……絶対にだ」
流れる風に今にも掻き消されそうなルイゼルトの声に耳を傾けようとするが、先程に比べて硬い表情を浮かべていた。思わず彼の頬にそっと手を伸ばすと硬い表情は消え、伸ばした手を掴むや否や口角を上げた。
「何だ?今日はいつにも増して積極的だな」
「ちょっ、ちがっ!!」
「本当に寝室に連れて行きたくなる」
「んもう!!そうやって私で遊ばないで!!」
「事実を言っているだけだ。俺の腕の中がいいと言うならいくらでも言え」
冗談を言っているとは思えない口ぶりに、頬を膨らましそっぽを向いたファウラは風に乗って鼻を擽る香りの方向を見つめた。