悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。

会えない時間の中で





 三日間の旅行の予定は、ルイゼルトの我儘によりもう一日伸び、訪れた先々で沢山の思い出を作り上げた二人は帰りの馬車の中で、怒りで我を失っているユトに怯えながら城に向かっていた。

 ルイゼルトが脅すつもりもなく語ったこれまでのユトの説教話を聞いて、きっと長い長いお叱りを受けるのだろうと震える肩を互いにぶつけ合いながら、見えてきた王都にゴクリと唾を飲み込んだ。

 ゆっくりと近づいてくる気高き城を見て、ふとファウラは隣に座るルイゼルトの顔を覗いた。

 景色を眺めるルイゼルトは、いつの間にか城の中でひたすら真面目に執務をこなす顔になっていて、旅先っで見せた笑顔は何処にも見当たらなかった。




(アワスト山脈の麓で生まれて初めて触った雪の感覚も、泊まった宿屋で生まて間もないの子羊の毛並みの感触もまだこの手に残っているのに、ルイとの時間はもう終わっちゃうのよね……)




 もう会えない訳ではないというのに、なぜこんな感情に襲われるのか。ユトのお叱りはいくらでも受ける代わりに、少しでも長くルイゼルトの傍に居たいと願ってしまう。

 願いは叶うことはないと言うように、馬車は城の門を通っていく。









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