悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。
曲がり角を曲がれば、その気配はピタリと消えた。気のせいだと言い聞かせるものの、妙に早く動く心臓が、きゅうっと痛む。
(……大丈夫。ちゃんと浄化はできていたんだから、ルイに影響は行ってはいないはず)
残る不安を拭いされないまま、ゆっくりとルイゼルトの執務室から遠ざかるように進んでいく。どうか影の影響が彼に及んでいない事を祈りながら、耳が痛くなる程ローレンの長い小言を聞いていた。
残りの修行はローレンにしっかりと扱かれ、影の存在を考える暇すら与えられなかった。
ふらふらの足に追い討ちをかけるように、ダンスレッスンを徹底的に行ったファウラの足は、夕方になればもう限界を迎えていた。ローレンはへとへとの彼女に、仕方ないと今日の修行を止めにした。
壁を伝ってようやくたどり着いた自室に入れば、もう動けないと大胆にその場に座り込んだ。
「はあ……すごい一日だったわ」
ふうと息を零すと、開いていた窓の外から気持ちのいい風が入り込んできた。
瞼を閉じて風を浴びていると、踊るように花の香りが漂ってくる。